インタビュー: 非犯罪化とその後 Vixen Temple

2026.03.31

2004年に世界で初めてセックスワークの非犯罪化を達成して有名になった南太平洋の島々はオランダ地名の「シーランド」から「新たなシーランド」として入植者により名付けられた。私たちの多くがニュージーランドとして知っているこの島々の本来の名前はアオテアロアという。マオリ語で長く白い雲のたなびく地を意味するこの土地で、セックスワークや脱植民地主義について、SWASHメンバーが友人でセックスワーカーアクティビストのVixen Templeに聞きました。刑罰化を求める世論が強まる今、世界で初めてセックスワークを非犯罪化した国では、その後セックスワーカーの仕事や権利運動はどうなっているのでしょうか?また植民地支配や強権国家と、セックスワークの刑罰化は、どちらも権力が私たちの身体を管理しようとする試みであることについて考えていきます。

まず自己紹介をお願いします。

Vixen Temple(ビクセン・テンプル)です。スコットランド、アイルランドとマオリのルーツがあります。肩書きはたくさんあるけどtakatāpui sex witchと名乗っています。セックスワークのアクティビスト、ライター、詩人、プロデューサー、パフォーマンスアーティスト、ドラァグクイーンなど様々な活動をしています。Stripped and Unscriptedというポッドキャストもやっています。家父長制を燃やすことをいつも心に。セックスワーク関係では、ネット上での検閲問題に関心があります。どの活動でも家父長制と植民地支配が私たちの社会に与えた負の影響について伝え、そこから前に進むための対話を持つことを目指しています。地元のクィアのセックスワーカーを祝福するドラァグショーを手がけたり、ウェリントンフリンジフェスティバルではTip: A Stripper’s Guide to Strip Club Etiquetteというストリップクラブについてのソロコメディーを上演しました。

(これ私見に行きました!めっちゃ面白かった。ストリップに来るうざい客あるあるとか、やらかしたエピソードとか笑 あと昔見た風俗の客役のドラァグキングも超よかった笑 選挙の資金集めパーティーで一緒にショーに出たこともあるよね。政治的なドラァグ大好き)

NZPCについて教えてください

NZPC (Aotearoa’s Sex Worker’s Collective)はセックスワーカーによるセックスワーカーのための草の根組織で、全てのセックスワーカーの権利、安全、健康、福祉のために活動しています。1980年代後半に設立され、長年セックスワーカーに関係する法改正の最前線で活動してきました。私も役員を務めています。2003年の売春改革法では草案作成にも協力し、世界で初めてセックスワークの非犯罪化を達成しました。Sirenという季刊誌を発行し、セックスワーカーが詩、芸術、記事などを投稿しています。Needle Exchange というクリニックとも提携し、決めつけや偏見なしに低価格で安全な注射器具などを提供しています。また政府・市民社会・性産業間の重要な連絡拠点としても機能しています。

NZPCはアオテアロア各地に事務所があります。どんなところですか?日本ではなかなかセックスワーカーの常設のスペースが確保できないことが大きな課題の一つです

NZPCの事務所ではコンドームやローションが買えたり、セクシャルヘルス関係のサービスやカウンセリング、法律相談も受けられます。ワークショップの会場などにも使用しています。火曜日から木曜日は常駐のスタッフがいて、ワーカーの相談にのったり必要なサービスに繋げたりしています。人種や国籍に関わらず全ての人が利用できます。

FUSについて教えてください

Fired Up Stilettos(FUS)は、アオテアロアにおけるアダルトエンターテイナーの権利と尊厳を擁護するセックスワーカーによる草の根団体で、私は以前イベントの運営を担当していました。2021年、ストリップクラブのカレンダーガールズで経営陣との団体交渉を試みた従業員19名を一斉解雇したことを受け、ポネケ(ウェリントン)で設立されました。ストリップクラブで働く人々が直面している不公正な扱いについて発信しコミュニティ内で大きな反響を呼んでいます。私たちの目的は、政治活動を通じてアダルトエンターテインメント業界の労働者の労働権を確立すること、誰もが労働者としての権利を主張できるように必要な相互支援をすること、そして業界全体を団結させ、集団の力を活用して労働者としての権利を確実に実現することです。ストリップクラブに関する法律は70年代から改正されていません。現在活躍しているダンサーたちが生まれるより前の法律です。

私も昔一度カレンダーガールズで働いたことがあります。オーナーに酷い扱いをされてすぐやめたけど。FUSのデモや集会を何度も見に行きました。クラブの前に持ち運び用のポールを設置してポールダンスをしながら抗議集会をやったの、労働運動として天才的だと思った。

具体的にはどんな活動をしてますか?

ストリップダンサーと連携し組合活動の支援やリソース提供を行うほか、不当解雇されたストリップダンサーへの経済的支援も行っています。また、ストリップダンサーが業務委託者としての法的権利を確実に理解できるよう、関連資料を作成・共有するとともに、必要な法改正を求める運動を展開しています。私は議会特別委員会への請願を支持する口頭陳述においてFUSの代表として発言したほか、集会や地域イベントでの演説、メディアのインタビューなどでもFUSの活動について話しています。

以前にFUSがやっていたファンドレイザーパーティーに行きました。色々なパフォーマンスが見れてとても楽しかったです。

Kick Up a FUSというイベントで会場を一晩だけストリップクラブに変え、ダンサーを本来あるべき独立した個人事業主として扱い、罰金などがない労働環境を作り上げました。出演者は売り上げの100%を受け取り、自分で音楽を選び、好きな時に休憩を取ったり、退店したりできます。私たちの目標は、職場での搾取や虐待が「業界の常識」ではなく、経営者たちがそう仕向けているのだと提示することです。労働者を虐待することなくストリップクラブを経営することは可能です。他のクラブもダンサーを適切に扱うようになって欲しいと願っています。この業界は、私たちを人間として扱わない貪欲な経営者ではなく、労働者自身によって運営されるべきだと強く信じています。こうしたイベントの企画・運営はとても良い経験でした。コミュニティを育て、人々を楽しませ、独立した労働者として働くことなど、私がこの業界で愛している側面を改めて思い出させてくれました。ストリップクラブはシスヘテロの男性だけが楽しめる場所だとは思いません。ストリップクラブの中にも、クィアな存在のための居場所があるのだと確信しています。ストリッパーを本来あるべき独立した労働者として扱う環境を整え、クィアなアイデンティティを取り入れた先駆的なイベントでした。労働者がどのように扱われるべきかという基準を打ち立てたものであり、その創設者であることを心から誇りに思っています。

最近景気はどうですか?日本ではそもそも景気が悪くて需給のバランスが悪いところにコロナもあって値段が下がったりして最悪。私も去年の夏久しぶりにお店に出たけど全然お客さん入らなかった。

2018年からセックスワーカーとして働いているけど、特にコロナ後は景気が悪い。セックスワーカーはいつも不景気の予兆を感じるというけれど、私も2021年ごろからそう感じていました。経済全体が苦しい時は、セックスワーカーにとっても危険で難しい時期です。利用客もお金がないから少ない金額で多くを求めてくるようになる。約束を破る人がいたり、予約も減りました。常連のお客さんがいないと続けていくのは本当に大変。失業者も増えるから業界に参入する人も増え、供給過多にもなっています。

日本では現状の不透明で複雑な法制度に加えて買春処罰法の導入の議論も始まり、刑罰化が進むことが懸念されています。アオテアロアではセックスワークを世界で初めて非犯罪化してもうすぐ20年になります。非犯罪化後の業界で働くのはどんな感じですか?

生計を立てようとしただけで逮捕されるかもしれないことが、どれほど恐ろしいことか想像もつかない。障害を持つ者として、障害のせいでしばしば子供扱いされてきたこの世界で、セックスワークは私に経済的な自立をもたらしてくれました。9時5時の仕事を続けることができないから、非犯罪化された選択肢としてセックスワークがあることは、文字通り私の命を救ってくれました。

 仕事中の怪我でACC(事故保険制度)の給付を受けることができたり、自分の逮捕を恐れることなく私を暴行した利用客を訴えることもできました。移民労働者に同じ権利が認められていないことは、とても不公平だと思います。移民セックスワークの犯罪化は、アオテアロアにおいて最も変えるべき点です。対象が労働者でも利用客でも、セックスワークを犯罪化しようとする法律は、家父長制的かつ植民地主義的であると固く信じています。

(注 セックスワークは非犯罪化された今も、市民権か永住権を持たない人が性産業に従事することは禁止され、見つかれば強制送還の恐れがある)

自分の身体で何をしていいか、何をしてはいけないかについて、政府にルールを決める権利を与えているなんて間違っている。いつか世界中でセックスワークが非犯罪化されることを願っています。それはファシスト的なイデオロギーから私たちを解放するための重要な一歩でもあります。

活動をしていてよかったことはなんですか?

15センチの赤いプリーザーのハイヒールを履いて議会の特別委員会で発言したこと、議事堂の敷地内でポールダンスを披露したこと、そしてストリッパーであるという理由で司法制度において正義を否定された経験についてスピーチをしたことを誇りに思っています。他のセックスワーカーから「私の記事や活動のおかげで、セックスワーカーであることを誇りに思えるようになった」一般の方々から「私の文章がセックスワークに対する見方を問い直し、私を支持する味方になってくれた」と言われる時も、自身の活動に大きな意義を感じています。

たくさんの情報をありがとうございました!またアオテアロアでみんなに会えるのを楽しみにしています。

聞き手 frida people : 政治的なドラァグ生き物、時々セックスワーカー。全部で10年ほどアオテアロアに住んでいました。

ハート Latest Stories ハート

新着記事